かさの向こうに縁あり
無言のまま箸を進めていると、平助の視線が私に向けられていたことに気づいた。


ふっと視線を彼に合わせると、口を開いた。



「今日は朝から巡察だから、また一人でいてもらうけど……大丈夫?」



心配しているようで、顔を覗き込まれていた。


……でも何だか、まるで昨日のことが悪事だったかのような言い方。


私にしてみれば、原田さん達との百人一首は楽しかったからいいんだけど、どうやら平助にとっては違ったみたいで。

それほど心配してくれている、というか何というか……


とにかく、くすぐったくて仕方がない。



『今日は荷物を取りに行くので大丈夫です』


「ああ、そう……そういえば」



紙を置きかけた時、平助は呟くように言った。


彼は顔色一つ変えない。

私の目を見つめたまま、少し間を置いて続けた。



「あの夜、どこに泊まったの?」



問い詰めるようなその声に、思わず怯む。

怖くはないし、別に何か悪いことをしでかしたわけでもないけれど……



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