かさの向こうに縁あり
いや、よく考えてみればちょっとはしでかしたな……


苑さんの家の戸に寄りかかって、迷惑かけたんだっけ。

あれは本当に、苑さんだけじゃなくて近所の人にも迷惑だったと思う。


そんなことを考えていると、平助は何故か焦っていた。

きっと私の表情がぼけっとしていたんだろう。



「いや、ほら……女の子なんだから野宿してたらなーとか、ね?そういうことだよ?」



どうやら結構心配をかけてしまっていたらしい。

そしてふと思った。


どうしてそんなに気にかけてくれているんだろう……と。

必然的に私も平助を気にかけているし。


……何かがおかしい。



「まあ、無事でよかったよ」



暫く私が押し黙っていると、彼はまた焦ってそう言った。


何の焦りなんだろう、と気にしつつ。

私は紙と筆を手に取り、ささっと質問事項を書いた。



『祇園さんへの行き方を教えてほしいのだけど』



猫かぶってんのか、と言いたくなるほど丁寧な言い方で書いて、見せる。



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