かさの向こうに縁あり
「ゴホッゴホ……」
我慢することなく、私は大きく咳をする。
――否、我慢さえできないほど、体が弱っているんだ。
自分の体じゃなくても、それは何となく分かった。
ヒューヒューと喉から音が洩れる。
男性は私のことを心配して、上半身を起こしてくれた。
『気持ち悪くない?』
彼はそう問う。
あえて「大丈夫?」と聞かなかったところを見るあたり、男性はこの“誰か”の命が長くないと気づいている。
その声色は、やっぱり悲哀を含んでいて。
思わずこちらまで悲しみが込み上げてくる。
いっそのこと、「君はもう長くない」と言ってくれた方が楽なんじゃないだろうか……
なんて真剣に考えてしまうけれど、これは私の問題ではなく、あくまで“誰か”の問題であって。
何も意見なんて言える立場でもない。
それに第一、現実でない世界でそんなことができるわけない。
我慢することなく、私は大きく咳をする。
――否、我慢さえできないほど、体が弱っているんだ。
自分の体じゃなくても、それは何となく分かった。
ヒューヒューと喉から音が洩れる。
男性は私のことを心配して、上半身を起こしてくれた。
『気持ち悪くない?』
彼はそう問う。
あえて「大丈夫?」と聞かなかったところを見るあたり、男性はこの“誰か”の命が長くないと気づいている。
その声色は、やっぱり悲哀を含んでいて。
思わずこちらまで悲しみが込み上げてくる。
いっそのこと、「君はもう長くない」と言ってくれた方が楽なんじゃないだろうか……
なんて真剣に考えてしまうけれど、これは私の問題ではなく、あくまで“誰か”の問題であって。
何も意見なんて言える立場でもない。
それに第一、現実でない世界でそんなことができるわけない。