かさの向こうに縁あり
「ーーえ?」



私を……嫁に……?


一瞬頭の中が混乱した。

けれど、すぐにはっと我に返る。


いや、私じゃない。

夢の中で私の姿になっている“誰か”だ。


私としたことが、分かっていながらもつい驚いてしまった。


普段は恋愛に興味もないし、ましてや結婚なんて考えたことない。

それなのにどうして反応してしまったのか……



「はあ……」



そっと溜め息をつく。

気づけば、先程の男性の言葉の後から、私は現実に引き戻されていた。



「まったく、迷惑な夢だな……」



思わずそんな言葉が口をついて出てしまった。


ん?

『口をついて出てしまった』……?



その瞬間、柔らかい光が差し込む障子の方から、強い視線を感じた。

その方を横たわったままさっと向くと、いつもの彼ら3人組がいた。


隙間に、顔が団子のように縦に並んでいる。


原田さん、それと彼に付き合わされている尾関さん、尾形さんだ。

昨日は来なかったのに、まだ覗く気らしい。


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