かさの向こうに縁あり
きっと原田さんだけ覗きに来てるんだろうけれど、もうこの際だから「覗き団子」と命名したい。


……と、冷めた気持ちで考えていたけれど。



「ひ、妃依ちゃん……」


「なんですか」



どういう訳か、原田さんは驚いた表情をしている。


原田さんの下にいる尾関さんも目を丸くしている。

尾形さんは相変わらずの無反応、無表情だ。


これは一体、どういうことなんだろうか。

私が何かおかしいんだろうか。



「こ……」


「こ?」


「声、が……」


「こ、え……が?」



原田さんが何かを堪えるように、プルプルと僅かに震えている。


何かと思えば、すぐに思い当たることがあった。

原田さんと尾関さんの驚きの理由が、やっと分かったんだ。


ばっと、正面を向いて勢い良く起き上がる。



ここ数日ずっとなかったものを、私は知らぬ間に手に入れていたみたいだ。



「声、が……出て……る!?」



そう、声が出てる。

あの日失った声を、今取り戻した。


思わず喉に触れる。


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