かさの向こうに縁あり
でもそれを聞く暇さえ、副長さんは与えてくれなかった。

閉められた障子の外を気にする素振りを見せる。



「あまり俺の部屋に出入りしてるのを見られても仕方ねえ。今日はもう戻った方がいい」


「……はい」



そうか、と納得して、副長さんに促されるまま、私は立ち上がった。

そしてほぼ無心で障子を開け閉めして、縁側へ出る。



風が吹いている。

そこまで強くなく、暖かい、少しからっとした風だ。


その時、ふと目についたのは、少し遠くに咲く花。

この場所に似つかわしくないほどやけに鮮やかで、一際目を引く。

ツツジだ。


そうか、今の時期に咲いているんだ。

いつの時代でもそれは変わらないんだな、なんて思いながら。

私はその花を見て、花言葉は何だったかな、と疑問に思う。


辞書なんて持ってないしな……

ないから何を調べることもできないし、あったとしても花言葉が載ってるかは分からない。


そこでふと思い出す。



そういえば私、電子辞書持ってなかったっけ……!?


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