かさの向こうに縁あり
私の高校は電子辞書使用禁止だから、本当は持っていくことは反則。

だけれど、私は時々バッグの底に隠して持っていくことがあった。


私がここに来た日は、英語の予習のために使おうと思って、たまたま持って行っていたんだ。



電子辞書があれば、何でも調べられる。

花言葉だって、この時代のことだって。


それに、平助がこの間言っていた百人一首の訳だって……


気になることは全て、それ一つで調べられる。

なんでもっと早く気づかなかったんだろう。


そうとなったら早く部屋に戻りたくなって、縁側を静かに走って帰る。



部屋に入るなり、私にしては珍しく勢い良く障子を閉め、バッグの元へ一直線に向かった。


バッグを手に取ると、チャックを開け、中身を全て取り出す。

そして、底にあるポケットのチャックを開けてみた。



「……あった!」



そこには、ちゃんと電子辞書が入っていた。

珍しいものを見るような目で、それを取り出す。


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