かさの向こうに縁あり
この訳を見て、私は唖然とした。

何かを感じる。
嫌な予感がする。


そしてしばらくして、あの時、偶然部屋に落ちていた百人一首の札を見て彼が言った一言を思い出す。



『その歌、ここみたいだね……』



あの日、確かに平助は悲しそうな表情をしてそう言った。


作者・蝉丸の言った“ここ”とは、逢坂の関。

彼の言った“ここ”とは、屯所のことだ。


平助がその二つを重ねて考えているとすれば、あの時の表情から察するに、一つの解釈に辿りつく。


それってもしかして……



この場所で出会った私達が、この場所でもうすぐ別れる、ということーー?




確かにそれは一理ある。



『平助は近々、隊を離れることになってんだ』



今日、副長さんに聞いた話を思い出すと、簡単に納得できる。



初めから、平助は私を分離する隊の方に連れていく気はないんだーー



だから彼はああ言ったんだ。


あの時の言葉の意味が今やっと分かったけれど、まさかこんな意味だったなんて……


突然真実を明らかにしてしまったことへの反動は大きい。

直前に副長さんの話を聞いていたというのに。


これを受けて、改めて考えることは一つ。



私は、どうするべきなのかーー



電子辞書の画面に表示された字面をただ見つめ続けて、どうしようもないのに、それを必死に模索した。


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