かさの向こうに縁あり
少し小柄な体型のわりには、意外と強気で3人の男性の相手をしている。


とはいえ、相手をしているのは、今鍔迫り合いになっている一人だけ。

両脇の二人は息を呑んで見守っているだけだ。


勝てるはずもない相手だと悟ってか、弱腰で挑んでいるような気がする。

何故なら、私にもこの背を向ける男性の強さが何となく分かるから。



「絶対に驚かないでよね!」


「ぐっ!」



刀に力を込めて、背を向ける男性が相手を飛ばした。


刀を下に持って、飛んで倒れた男性の所にゆっくりと近寄り、その男性の顔を身をかがめてじっと見つめる。

そして口を開いた。



「新選組八番隊組長、藤堂平助なり」



そういうなり、にやりとした。

まるで勝ち誇るように。


それを見た相手や私の両脇にいた二人の男性は、怯えるようにして逃げていった。



「驚かないって言ったくせに」



三人が逃げるのを確かめ刀を鞘に納めながら、『藤堂平助』という人は私の方に微笑みながら歩み寄ってきた。


この人も丁髷を結い、刀を持ち、着物を着ている。



< 16 / 245 >

この作品をシェア

pagetop