かさの向こうに縁あり
そうとなったら動くのは早い。

障子を開け、両手を広げて外の新鮮な空気を目一杯吸う。


季節的に花曇りとでも言うのだろうか、そんな曇り空だ。


その空を見て、はっとあることに気づく。


まずは副長さんに外出の許可を得なければならないんじゃないか、と。



仮に、何も言わずに出かけるとしよう。


部屋にいないことが彼に洩れて、「一度脱走しかけたアイツのことだ、忠告したにも関わらずまた脱走したんじゃないか」と真っ先に疑うのではないだろうか。



そうだとしたら、今度こそ本当に殺される。


屯所にいることを許された今でも、決して信用されているわけではないと思うから。


……ああ、だめだ。

つい殺されることばかり考えてしまう。


ぱんっと軽く両頬を叩いて、気を取り直す。



今は“ここで生きること”だけを考えよう。



とりあえず、許可を得に彼の部屋を訪ねなければ……そう思ったけれど。


そういえば、肝心の副長さんの部屋の場所を記憶していないんだった……


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