かさの向こうに縁あり
縁側沿いの障子は皆同じで、「〇〇の部屋」と名前が書いて貼ってあるわけでもない。
今までは呼ばれて人の後をついていっただけだから、この部屋から何番目の障子を開ければ彼がいる、なんてのは分かりっこない。
とりあえず外に出て、誰でもいいから副長さんの部屋がどこか聞いてみよう。
そう思い立ち、後ろ手に障子を静かに閉める。
とりあえずこっちだ、という方向は分かったから、左に進む。
するとちょうど良いところに、縁側沿いの庭に男性が一人、立っていた。
心の中で「よっしゃ、手間が省ける」と思って、早速声をかけてみる。
「あのー、すみません!土方副長のお部屋はどちらでしょうか」
その男性が私の声に反応してこちらを向く。
瞬間的に、ちょっと強面のお兄さん、という印象を受けた。
本当にちょっとだけど、怖い。
何も答えてもらえないかとも思ったけれど、表情を崩さずに、意外にも男性は淡々と説明してくれた。
「……ここを真っ直ぐ行って、ちょうど庭のあの木が脇に来る位置の障子を開けてみろ。そこが副長の居室だ」
そう言って、男性は目の前に広がる庭の遠くを指す。
その方を目で追ってみると、そこには開花時期も終盤に差し掛かっているような椿の木があった。
今までは呼ばれて人の後をついていっただけだから、この部屋から何番目の障子を開ければ彼がいる、なんてのは分かりっこない。
とりあえず外に出て、誰でもいいから副長さんの部屋がどこか聞いてみよう。
そう思い立ち、後ろ手に障子を静かに閉める。
とりあえずこっちだ、という方向は分かったから、左に進む。
するとちょうど良いところに、縁側沿いの庭に男性が一人、立っていた。
心の中で「よっしゃ、手間が省ける」と思って、早速声をかけてみる。
「あのー、すみません!土方副長のお部屋はどちらでしょうか」
その男性が私の声に反応してこちらを向く。
瞬間的に、ちょっと強面のお兄さん、という印象を受けた。
本当にちょっとだけど、怖い。
何も答えてもらえないかとも思ったけれど、表情を崩さずに、意外にも男性は淡々と説明してくれた。
「……ここを真っ直ぐ行って、ちょうど庭のあの木が脇に来る位置の障子を開けてみろ。そこが副長の居室だ」
そう言って、男性は目の前に広がる庭の遠くを指す。
その方を目で追ってみると、そこには開花時期も終盤に差し掛かっているような椿の木があった。