かさの向こうに縁あり
無事に、私は適当に一番左端の門を出て左へと進んでいた。

太陽の位置から考えると、おそらく北へ向かって。


今になって思うけれど、あの門や建物、すごく立派だ。

技術やこれを建てた人々を尊敬してしまう。


京都は派手だと勝手に思っていたけれど、街は特に華やかな様子はないような気がする。

それがこの時代の“普通”だと思ってしまうのは、とても浅はかだと思うけれど。



それにしても、ここがそんなに血生臭い感じの土地だとは、とてもじゃないけれどまだ信じられない。


そんなに物騒な街なのか、ここはーー



ふと、あの時、副長さんが私に残した言葉を思い出してしまった。

とても気にかかっている、あの言葉を。



『ーーお前が俺の部屋に頻繁に出入りしているのを見て、よく思わねえ奴らがいると俺は踏んでる。だから、周囲にはくれぐれも気を付けておけ』



あれは一体、どういう意味だったのだろうか……


私は咄嗟に理解できなかったし、それは今になっても同じだ。

何のことやら、さっぱり分からない。


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