かさの向こうに縁あり
でも副長さんは真剣な表情で私を見据え、そう言った。

副長さんは、何を悟っているんだろうか……


“新選組副長”という職業柄なのか、きっと彼はとても鋭い洞察力をもっているんだろう。

だからこその言葉だ。


当の本人は、こうして暢気に散歩をしているというのに、彼は私の身を案じてくれている。


一応は気を付けた方がいいのかな、とだけ思って、副長さんの言葉を心の隅に留めておくことにした。




それからもずっと真っ直ぐに歩いていく。

無心に、ただひたすら前を向き続けて。


すれ違う人々からの視線は数度にとどまらないから、なんだかもう慣れてきた。

問題はどうせ、この髪型だけなのだろうし。



ここは俗に言う表通りなのだろうか。


京都の街は碁盤目状に張り巡らされた道があるけれど、どこも同じような景色だから、現代ですら今どの道にいるか分からなくなるくらいだというのに。

通りの名前を覚える手鞠歌があると聞いたことがあるけれど、それを覚えておくんだった、とつい思ってしまうくらいだ。


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