かさの向こうに縁あり
それに、元の世界に戻りたいのは山々だけれど、今戻れたとしても心残りがあるような、ないような。

そんな中途半端な気持ちのまま、ここでの生活を終わらせたくはないから、一概に早く戻りたいとは言えないのが事実だ。


そんな気持ちでこの世界で息をし、ひたすら通りを歩いていく私。

矛盾してる……


少々気落ちして、ふいに足取りが重くなる。



そのとき、自分でも何だか分からないけれどはっとすることがあった。




背後から視線を感じる……気がする。




嫌な気分だ。

思わず足を止め、息を呑む。



『周囲にはくれぐれも気をつけておけ』



副長さんにさっきそう言われたばかりだというのに、まさか。


……もしかして、そう言った張本人が見張っていたりして。

だとしたら、彼はストーカーか!


あまり変な方向に考えないようにしたら、つい「副長さんストーカー説」が出来上がってしまった。

それも十分変な方向の発想だ。


いや、そんなことはどうでもいい。

とにかく、振り返って確認しなければ。


そう思って、勢いよく後ろを振り返った。


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