かさの向こうに縁あり
襖か障子かが閉まる音がすると、部屋には漸く静寂が訪れた。


藤堂平助は私が寝ている布団の横に、呆れているような溜め息をつきながら座った。



よく考えてみたら、2人っきりになってしまった。


賑やかなのよりはいいけど、さらに起きにくくなっちゃったな……



「ねえ君、本当は起きてるんでしょ」



一瞬、繰り返す呼吸が止まってしまうぐらい、ふいに質問をされる。


起きているのがバレてる?

そんなことはないよね。


自分でも自分に聞いてみる。

答えはもちろん、『No!』と言いたいところだけれど。



「起きてるのぐらい、俺は気づけるよ。甘く見ないでほしいんだけど」



さらに彼は言葉を続ける。

まるで私が寝た振りをしていると気づいているかのように、呆れて。


別に甘く見ているわけではないんだけれど、何故かそう思われている。


この人は何者?

勘の良すぎるただの男ってことは考えられない。


こうして考えている間に、藤堂平助は座ったまま私を見下ろしている。



「ほら、起きなって」



座ったまま見下ろしていると思えば、彼は私の布団を取り去った。



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