かさの向こうに縁あり
「っ……!」



短く叫びながら飛び起きた、つもりだったけれど。


やはり声は当然だと言うように出ない。

その為、声にならないような音が半端にしか出なかった。


布団が取り去られたと同時に、私は上半身を起こし、藤堂平助を睨みつける。



「女の子にそんな怖い顔されたの、初めてだな」



私の鋭い視線を、大袈裟に笑ってかわした。

しかも、子供らしい笑顔で。


その様子に驚いて、思わず目を見開いてしまう。


ずっと笑われているうちに、私は両の頬を膨らませた。

声が出せない分、顔での感情表現が難しい。


笑い続けていた藤堂平助は、そんな私の顔を見て笑うのをやめ、微笑みを浮かべた。



「でも悪かったね。ごめん」



意外と素直だな、なんて思ってしまうほどの子供らしい笑みと正直な謝り方だった。



そこで、私は思わぬことに気がついてしまった。



藤堂平助が着物を着ているのは、引剥ぎに襲われた時から分かっていた。


だけれど、まさか私まで……


そう思って服に触り、ゆっくりと視線を移した。



「……!?」



いつの間に、という思いよりもまず、誰がこんなことを、と思ってしまった。



驚くことに、自分の着ている服が制服ではなく、着物だったのだ。



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