かさの向こうに縁あり
とんでもないものが来る。


そう悟った直後、それは姿を現した。




「やっと見つけたぞ、娘……!」




その声、その大きな姿は、私の平穏を壊しにやってきたようだ。


小路に入ってきたそれを平助もぱっと振り返る。

彼が「はっ……」と口にしたのを見ると、今噂をしていた、あの何度か私が接触してしまった男性がやはり服部なんだと認識できた。

私を守るように、前に立っていた平助の右腕がさっと伸ばされる。


服部は息を荒らげながら立ち止まり、私を睨み付けている。

その噛みつくような視線に、私の体は強ばった。


そして極めつけに、彼は刀の柄に手をかけたのだ。



「藤堂君、そいつは間者だろう。こちらに渡してもらいたい」


「それはできないです。服部さんに渡すわけにはいきません」


「そうか。ということは、そいつは君の大切な人なのか、なるほどな」


「……っ!」



「何も言えないということは図星か」と服部は言うと、不気味に微笑む。

言葉とは裏腹なその表情を浮かべたまま、すっと鯉口を切り、ゆっくりと刀を抜いた。

その行動に若干の焦りを感じたのだろうか、平助もすぐさま抜刀し、互いに刀を構えて向き合う。


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