かさの向こうに縁あり
「――また見つけてね、平助」



5度も偶然に、この広い町で会えるなんて、ありえないことだった。

そんなの、夢物語だったのかもしれない。


でもそれでも私は、5度も平助に見つけてもらえたんだ。


だからまた、私がここからどこへ逃げたか知らなくても、きっと見つけてくれるはずだ。



京の町中を探し回って、探し回って。

そして、笑顔で私を迎えてくれるんだろう。


これまでのその瞬間は、私にとって必ずしもよいものではなかったけれど。



「見つけるよ、必ず。どこへ行っても見つけてあげるから……俺を信じて……!」



そう言うと、一瞬だけ平助は私を振り返った。

ほんの一瞬。

通り過ぎる人の横顔が視界に入った時のような、本当にぱっと見えた程度の短さ。


初めて彼を見た時のような凛々しさと、これまで見たことのない厳しさの混ざった表情。

そこにちょっぴり口角を上げていた……ように見えた。


そして、いつの間に投げたのだろう、気づけば足元にひらりと落ちてきたものがあった。

さっと拾い上げると、「村瀬妃依殿」と書かれた、文らしかった。


そうと分かった瞬間、ぎゅっと握り締めてみる。



「信じる。必ず……必ず……!」


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