かさの向こうに縁あり
本来なら絶対に動いている姿を見ることもない人達。

そんな人達をこの目で見られた、ような気分、といった方が相応しいだろうか。


それはひいひいおばあちゃん、おじいちゃんに限らず、平助をはじめとして新選組の人達、それに苑さんも。



初めは、とにかく逃げたかった世界。

それでもいざ戻ってきてみれば、会えるはずのない色々な人に出会えて、よかったと思える。



「そういえば、なんでそんなこと知ってるの?」



ふいに疑問を抱いた。

いくら母と夫婦だからと言って、そこまで母方の先祖に詳しいとは、なんてマニアックな……と思ってしまったから。



「この年になると、家系とか先祖のこととか気になってくるんだよ」



そういうものか。ふーん。


意外と理由は単純なようだった。

けれど、それだけの言葉なのに何故か深くも感じる。



――そうか。

私も歴史の上に生きている、っていうことなんだ。


進む“時”は、過去があるから成り立っているんだ。

きっと、そういうことだ。



ああ。会いたいなあ。

平助、副長さん、原田さん、尾形さん、尾関さん、そして苑さんに――


なんて少しでも考えようものなら、すぐに涙腺が緩んでしまう。



「というか妃依、泣いてるの?どうかした?」


「な、なんでもない!それより、京都は春に行きたいな!仏光寺っていうお寺の枝垂れ桜が綺麗で――」



人に会いたくてたまらないから泣くなんて、初めてだ。


胸に手を当てる。
正確には、胸ポケットに。

この文に込められた想い、大事にしなければならないし、何が書かれているのか知りたい。




私が“本当の”平助を見つけるよ。


だから、あの仏光寺の枝垂れ桜の下でこの文を読むその時がきたら、「好きだよ」と素直に伝えるから、応えてほしい。


優しい風で、その花びらを舞わせて――。




*END*
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