かさの向こうに縁あり
ついに誰かの声がかかった。


若い女性の声だ。

若いと言っても、私より年上なことは、失礼かもしれないけれど声質からして確実。


壁に寄りかかって、そのまま様子を見ることにした。



「あれ、玄関が何で開かないの!え、どうして!?」



後ろで何やら慌ててガタガタと派手な音を立て、何かやっている。

それに合わせるように背中に僅かな揺れを感じる。


……あれ、おかしいな。

何で私まで一緒に揺れてるんだろう?



「そこに誰かいるんですか!」



扉が開かないことに対して苛立っているのか、暫くすると大声をあげ始めた。

そして同時にドンドンと叩き、これまた派手な音を立てている。


軽く近所迷惑だろう、こんな夜中にこんな音を立てられたら。



「もう、誰かいるんでしょう!?退いてください!」



この女性、とても気が強そうだ。

もしここにこうして座っているのが男性だったら、酷く怒られるに違いない。


……ん?

“ここにこうして座っている”?



「退いてくだ……さいっ!」



相当苛立った女性は、ついに扉を勢い良く開けた。



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