かさの向こうに縁あり
「じゃあ、家族に追い出されたの?」



「それって家出とほぼ一緒じゃないんですか」と言いたい目で見つめながら、また首を横に振る。



「んー……じゃあ、駆け落ちに失敗して男とはぐれた、とか?」



この女性はこんな有り得ないことまで聞いてくるのか、と思いつつも、これまた私は首を横に振る。



「もしかして、家がない……とか?」



4回目の質問で、漸くそこに辿り着いた。

また質問に「違う」と答えようとして横に振りかけた首を、やっと縦に振った。


“家がない”というのは、あながち間違ってはいない。

実際は、ここに私は元から住んでいなかったから家がない、ということになるだろうか。


新選組の所から脱走してきても、どうせ行く宛も帰る場所も、何もない。


女性は私をじっと見つめて、無表情で何かを考えているようだ。

できれば野宿はしたくない。

どうか私を、ここに住ま……



「じゃあ、うちに住んだら?」



……わせてください。

と、それぐらいは私の心中で言わせてほしかったのだけれど……



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