かさの向こうに縁あり
先程から、どうやらこの女性は私の考えていることを全てお見通しのようだ。


でも、今の状況下では嬉しいことを言ってくれた。

野宿の可能性がなくなったんだ。


目を輝かせて、「いいんですか?」と言うように女性を見つめる。

するとすぐに、にこっとして「いいのよ」と言った。

そして私に右手を差し伸べた。



「ここじゃあれだから、さあ、中に入って」



その言葉を聞いて漸く気を抜いて、ほっとひと安心した。


彼女の手を握って、ゆっくりと立ち上がる。

とても柔らかく、優しさを帯びた手だった。



外には私達以外には出ておらず、奇妙に思うほどの静寂と闇に包まれていたことに気づく。

車も電気もない時代だから、か。


いくら住んでいる所が田舎だからと言えど、車の音ぐらいは聞こえるし、街頭ぐらいはついている。


でもこの時代にそんなものはまだない。


だからかな……


立ち上がった時にふと見上げた広い空は、明るく感じられた。

今まで見たこともない小さな星までもが見える。


あまりにも綺麗で感動して、口を少し開けたまま見回してしまった。



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