かさの向こうに縁あり
私は白い薄手のワンピースだけを身に纏い、裸足のままだ。


そして底無し沼のような暗闇の中を、ひたすら落ちていく。


エレベーターで上階から徐々に降りていくような感じとは違う。

頭から逆さに、凄いスピードで落ちていくんだ。


両手を伸ばしても掴めるのは空気だけ。



また、この夢か……



何度見せれば気が済むのだろう、私はこの感覚が嫌いなのに。



『――む……せひ―――…』



少し低めの男性の声、毎夜耳にする声が、私の名を切れ切れ紡ぐ。

いつも通り、やはり全ては聞こえない。


一体誰が、私を呼んでいるのだろう。

何度も見る夢の中で、何度も。



『――大丈夫……?』



二度目には必ず、鮮明なその言葉。

やはりあの男性の声だ。


それ以上は何も分からない。

何度見ても、見慣れていても。



そして突然、視界が闇の黒から血の赤に変わった。


昨日初めて見た夢の続きだ。


私は死んだのではないか、とまた思ってしまう程の相変わらずのリアルさには再び驚く。



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