かさの向こうに縁あり
手首に痛みを感じながら歩き続け、30分程経った頃だろうか。


目の前には昨夜出たばかりの門。

それをくぐれば、瓦屋根が太陽に照らされ輝く、お寺の建物。



……はあ。

再びこの地――新選組の屯所に戻ってくることになろうとは……



下駄を脱いで縁側を歩き、ある部屋の前で平助が止まると、私も同時に止まった。

そして彼はようやく私の手首を放し、障子の前に方膝を立てて座った。



「副長、藤堂です」



この部屋はまさか、とは思っていたけれど、本当にまさかだった。


私を罵った男、土方歳三とかいう男の部屋――



「……入れ」



障子の向こうから声がして、平助はそれを聞くと障子に手をかけ、静かに引く。


開けると、そこには仏頂面で胡座をかく土方歳三がいた。


平助に続いて中に入らされ、私は彼の左隣に正座した。



「巡察中に偶然見つけたので、連れ戻してきました」



土方歳三にそう告げた平助は、私の肩に軽く触れた。



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