かさの向こうに縁あり
お辞儀して、とか何とかいう意味なんだろうけど、無論、私がこの人に頭を下げるわけもなく。


寧ろ、睨んだ。


これが本当の意味での“にらめっこ”だ。



「平助、二人で話がしたい。ちょっと外してくれるか?」


「……はい」



土方歳三にそう言われると、平助は躊躇いながらも返事をした。


立つ時に、心配そうな目で私を見つめる。

私のことを本当に心配してくれているようだ。


でも今の私は生憎、気が強い。


たとえこの土方歳三が「鬼の副長」と呼ばれていても、私の気は折れない。


そんな心配いらない、と言うように私は微笑んで見せた。

それでも平助は心配する以上の目を私に向けた。


でも少しすると土方歳三にお辞儀をして、この部屋から去っていった。



そして晴れて私は土方歳三と二人きりになった。

本当は「晴れて」の真逆なんだけれども。


今は何も考えないことが一番だ……



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