かさの向こうに縁あり
人を疑う職業って大変ですね、なんてつい思ってしまう。


そこで思いつく。


じゃあ私もこの人を疑ってみようか、と。



『私からも質問しますが』


「なんだ。言ってみろ」



土方歳三が、身元も分からない私に本当の気持ちを答えてくれる確率は、かなり低い。


それでも一方的に質問されるのは気にくわない。

その一心で私は新しい懐紙に一文、書き込んだ。



『貴方は私を殺す気ですか』


「は?」



眉間に皺を寄せ、口を開けたまま、彼は目もぴくりとさせずに私を睨み続けた。

数秒間の沈黙が続く。



「……これだから一般人は面倒なんだ」



沈黙を破ったのは、溜め息と共に吐き出された土方歳三の言葉だった。

彼は同時に目を閉じた。


そんなに呆れるものだったのかな、私の質問は……


そう問われる程の人斬り集団だってこと、この人は自覚してないわけ?

……まあ、それはないだろうけど。



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