かさの向こうに縁あり
「あ~っ!ちょっと何やってんの!」



そこに聞き慣れたやや高めの男性の声が響いた。

そして足音がバタバタと近づいてくる。


私を覗いていた男性二人は、それに驚きのような恐怖のような表情になった。

同時に足音のする方へ顔を向けた。



「うわ、番人が出た」


「逃げるぞ新八っ!」



何か言われるのが余程怖いのか、彼等はさっと障子を閉め、近づいてくる足音と反対方向に走っていった。


あの人達は一体誰なんだろう?

確か昨日も私を見てどうのこうの言っていたような気が……


……身の危険をものすごく感じるんですが。



「妃依ちゃん、起きた?」



再び障子を少しだけ開けて声をかけてきたのは、平助だった。

やっぱり平助だ、と思って彼と目を合わせ、こくりと頷いた。


私がゆっくりと上半身を布団から起こすのと同時に、彼は障子をさらに開けて部屋に入ってきた。


平助は一つ膳を持ってきてくれていた。



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