かさの向こうに縁あり
「これやこの~、行くも帰るも別れては~……」
尾形さんの綺麗な低い声が響く。
私は原田さん、尾関さんと札を取り合っている。
おかげでさっきの重く長い沈黙は終わりを告げていた。
あれから少しして、原田さんが百人一首をどこかから持ってきた。
百枚をばらばらに広げて、読まれる札をひたすら取った。
「百枚は面倒だ」と尾形さんが言ったから、読み札は選んだ50枚だけだけど……
そして今は、最後の札を取ろうとしているところ。
原田さんは「うーん」と唸り続け、尾関さんは両手を前に出して金属探知機のようにゆっくりと動かしている。
私は静かに札を探す。
「知るも知らぬも~逢坂の関~」
「これだあっ!」
バンッ、と豪快な音を立てて、原田さんは札を叩いた。
一人で喜びを噛み締めている。
でも、私も同時に札を取った。
実は私が取った札が正しかったんだ。
それにすぐに気づいた尾関さんが、鼻でふっと笑った。
尾形さんの綺麗な低い声が響く。
私は原田さん、尾関さんと札を取り合っている。
おかげでさっきの重く長い沈黙は終わりを告げていた。
あれから少しして、原田さんが百人一首をどこかから持ってきた。
百枚をばらばらに広げて、読まれる札をひたすら取った。
「百枚は面倒だ」と尾形さんが言ったから、読み札は選んだ50枚だけだけど……
そして今は、最後の札を取ろうとしているところ。
原田さんは「うーん」と唸り続け、尾関さんは両手を前に出して金属探知機のようにゆっくりと動かしている。
私は静かに札を探す。
「知るも知らぬも~逢坂の関~」
「これだあっ!」
バンッ、と豪快な音を立てて、原田さんは札を叩いた。
一人で喜びを噛み締めている。
でも、私も同時に札を取った。
実は私が取った札が正しかったんだ。
それにすぐに気づいた尾関さんが、鼻でふっと笑った。