かさの向こうに縁あり
「残念でした先輩。妃依ちゃんが取ったっすよ」


「なんだとっ!?」



原田さんはものすごい形相を私に向けた。


私も負けじとへへっとした顔を札と一緒に見せつけた。



「妃依ちゃん、強すぎる!」


「先輩が弱すぎるんすよ」


「んだあっ、もう!」



尾関さんの的確な言葉に、さすがに原田さんも何も言えなくなっていた。


いじり、いじられ……

そんな二人を見ていると、自然と笑みがこぼれた。



ここ――新選組の屯所に来てからというもの、私は笑うことが多くなった気がする。

別に今まで笑っていなかったわけじゃない。


なんか言い表しにくいけど、私が関わったことのある新選組の人には、皆温かみがある。


……鬼の形相のあの人は例外、だと思うけれど。



今までクールに生きてきた私を、底から全て覆してくれるような。

自分の気づかなかった一面を引き出してくれるような。


ふいにそんな存在に思えてきた。



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