5センチの恋
5センチの恋
「彼女出来た」
普段無愛想な表情が僅かに緩んで細まる目、あたしが好きなその表情。
「は?」
その表情に見とれてた呑気でアホ面のあたしは、今、心臓が鷲掴みされました、なんて口が裂けても言えない。
「受付のさゆりちゃん」
淡々と、だけどどこか嬉しそうに言う男、市原。アダナはイチ。
「…まじ?」
やば、リアクション難しいんだけど、待てこら、
「ん、気付けば」
「はは、良かったね、すごいじゃない」
いや、作り笑いの顔が引きつって何が「すごい」んだか、というか『気付けば』ってなに。
「おまえも早く彼氏作れ」
ああ、この鈍感男が放ったお決まりの決定打を受け止めるだけの強さをあたしに下さい。
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