5センチの恋
「…つら」
あたしはもう一度、胸に溜め込んだ何かを吐き出すようにそう呟く。
ツラい。
あたしじゃない誰かと一緒にいるイチを想像しただけで、堪える。
好きって、言えば良かったかな。
だけど、振られてたな。なんとなく。
期待はしてたけど、確信は無かったから何年もこの関係だったんだもの。
『好きにならなくて良かった』
イチはそう言った。
あたしは、なって欲しかった。
あの夜の距離が今は死ぬ程胸を締め付ける。
もう少し
もう少し
近付けたら、何か変わったのか。
もっとも、今の距離は、あの夜の5センチより更に開いているだろうけど。