5センチの恋
あたしの腰に回る腕は確かにイチのもので、
これはどう考えても後ろから抱き締められる形でベッドに寝ている。
(…な、なんで)
声にならない疑問文は意識してしまうと同時に、響きだした心臓がバクバクと煩い。
現状確認と名付けてあたしはゆっくり、イチの方へ向きを変えた。
体が触れている温度がやけにリアルで、だけど安心してしまいそうなそんな腕の中に眩暈がしそうになる。
溜め息が出そうな程、長い睫毛。規則的な吐息。あたしの部屋なのに、何故か悪い事をしている気分にさえなった。