君はガラスの靴を置いていく




まぁ、千花は自分から言うタイプじゃないし噂話もここまでは届いてないだろうから知らないのも無理はない。


『よく塾の場所が分かったね。待ち合わせ時間まだ決まってなかったから今連絡しようと思ってたの』

『千花をびっくりさせたくて』


俺は豊津先輩に見せるように千花の頭を撫でた。


『い、一回家に帰るつもりだったからこんな洋服だけど……』


『はは、別に平気だよ。千花はなに着ても可愛いから』


男って単純な生き物だな。
こんな事で対抗心が生まれてしまう。

すると、豊津先輩がゆっくり俺達に近付いてきた。



『えっと……これから二人でどこか行くの?』

明らかに動揺していた。やっぱりまだ千花に好意があるらしい。多分この夏期講習で距離を縮めようとしてたんだろうけど、そうはいかねーよ。


『デートですよ。俺達付き合ってるんで』


多分先輩は俺が千花を知る前からずっと千花の事を想ってたに違いない。

こんな俺に取られて同情するけど、何もアクションを起こさなかった先輩も先輩だよ。落としたい女が居るなら少しは悪い男にならないと。

心で想ってるだけじゃ何も手に入らない。




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