君はガラスの靴を置いていく
突き飛ばした方もショックだけど、突き飛ばされた方がもっとショックだ。
これは一種の拒絶。
そう受け止められてもおかしくない。
帰りたくない雰囲気を出したら男はみんな勘違いする。だけどここで怒る男ははっきり言ってカッコ悪い。
『千花が謝らなくていいよ。
俺の方こそごめんね』
千花は少し安心した顔を見せた。
千花には俺が優しい男に見えたのかもしれないけど内心は面倒な事を避けて平和的に解決しただけ
『そろそろ帰ろうか』
俺はニコリと笑った。
公園を出て自転車を走らせてる間も千花は俺に何かを言いたそうだった。
『洋平君、あの………』
俺は聞こえないふりをして千花に話しを振った。
『さっき蚊に刺されなかった?
俺もう二ヶ所刺されたよ、ほら』
刺された左手を見せると千花も乗ってきた。
『あ、実は私も』
『やっぱり?千花なんて色が白いから目立つよ』
そんな雑談をしながら千花の家へと走り、着く頃には千花に笑顔が戻っていた。
『じぁね、おやすみ』
『あ、洋平君……………………
ううん、おやすみなさい』
千花は出かかった言葉を言わなかった。
その続きはきっと『ごめんなさい』だ。もういいと言っても千花の性格から謝らずにはいられない。
千花に興味を持ったのは、千花みたいなタイプと付き合ったらどんな感じなのかなって。
派手な女には飽きてきてたし、別の刺激が欲しかった。
千花といると初々しくて、純粋な気持ちが移ったみたいに新鮮だった。
でもそれは一瞬の幻で、俺が清く正しくなる訳もなくて、彼女であるはずの千花と同等ではいられない。
歩幅も波長も気持ちも誰かに合わせるのは難しい。
それを苦痛に思ってしまう俺には………
やっぱり軽い女が合ってるのかもしれない。