君はガラスの靴を置いていく
TIME OF REPEATEDLY ジレンマ
俺達は騒がしい廊下を避けて、非常階段に移動した
あれから会う事も連絡をとる事もしていない。
だから千花から声をかけられるのは意外だった。
温厚な千花が文句の一つぐらい言いに来たのだろうか?
『どうしたの?』
俺は手すりに寄りかかった。
女に呼び出される事も怒られる事も慣れている。
それなのに………千花はやっぱり今までの女とは違った。
『課題は無事終わった?』
『………え?』
思わず聞き返してしまった。この状況が理解出来てないのは俺の方。
『……あ、ほら、課題をやるから暫く会えないって言ってたでしょ?だから……』
『ちょ、ちょっと待って。
………それ本気で言ってる?』
『え?』
その顔を見て確信した。
千花はあの言葉を信じていたんだって。
何の疑いもせずに。
だって勉強なんてしない俺が課題を理由に会わないなんて嘘に決まってるじゃん。しかもメールも電話もしないなんて普通は気付くだろ?
『あー……えっと……』
俺は苦笑いで頭を掻いた。
『もしかして、嘘だった?』
千花は手に持っていたノートをぎゅっとした。