君はガラスの靴を置いていく
そのノートからは栞(しおり)が見えて、見覚えのある四葉のクローバーが貼ってあった。
多分あの神社で千花が取ったものだ。
俺はずるいから自然消滅なら楽だなって思ってた。
だけど、千花にはちゃんと言ってあげるべきだったんだろうか。
ずっと俺を信じてた?
ずっと俺からの連絡を待ってた?
そんな四つ葉のクローバーを栞にしてまで大事にして。
『うん、嘘。あんなのはただの口実だよ』
会わなければ気持ちは離れる。
あぁ、終わったんだなって気付いてくれる。
そう思ってた。
『じゃぁ………さっきの女の子が言ってた事…
私達ってもう別れたの?』
『………』
千花が初めて強い目をした。
こんな直球で聞かれるのは苦手だ。面倒な事から逃げる癖がついている俺には特に。
俺の無言に千花は何かを悟ったようだ。
『………それならちゃんと言ってくれたら良かったのに。洋平君あの時怪我してたから大丈夫かな?
とか、課題ならまた私が教えた方が早いかもって、連絡しようか迷ったり。………私って馬鹿だね』
千花の目からボロボロと涙が流れた。
女の涙なんて腐るほど見てきたのに、何故か胸が苦しい。きっとこれが……………
『ごめん、』
罪悪感だ。
“糸井さんってさ……………
宮澤が思ってる以上に宮澤の事好きだよ”
まるの言葉がこだまする。
肩を震わせながら泣く千花を見て、思った。
やっぱり千花みたいに純粋で
綺麗なものに触れてはいけなかった。
だってガラスのようにひび割れ傷ついていく。