君はガラスの靴を置いていく
糸井千花は色々俺に疑問を持ってるみたいだけど、それを強く言えない事は知ってる。
恋愛経験はなく男にも慣れてない、むしろこの状況をどう対処したらいいのか分からないみたいだ。
『……………俺と帰るの嫌?』
俺はわざと声のトーンを落とした。
『………嫌と言うか……な、なんで私と………?』
うーん、やっぱり理由が必要?
女子を落とす言葉はいくつかあるけど、逆に引かれそうだしな。軽い女になら適当な事が言えるんだけど。
『千花ちゃんと少し喋ってみたくて。ほら、俺達今まで話す機会とかなかったじゃん?』
あくまで誠実に慎重に。俺はニコリと営業スマイルを浮かべた。
『そ、それはそうだけど………。
でも私男の子と一緒に帰るの初めてでその……』
糸井千花はずっとうつ向いたまま。
俺は結論を待てず、再び強引に腕を引いた。
『いいから乗ってよ、ね?』
そう優しく同意を求めた。
『ま……待って。二人乗りはちょっと……。
私、生徒会に入ってるし見つかったら先生に……』
俺はその言葉を待たず、糸井千花のカバンをかごの中へと入れた。
『見つかったら怪我人送っただけって言うから大丈夫』
俺はそう言って、糸井千花の絆創膏を指さした。
それに--------------。
『俺が無理やり二人乗りしたって言うから千花ちゃんは心配しないで』
俺の押しに負けたのか、糸井千花は渋々自転車の後ろへと乗った。