君はガラスの靴を置いていく
社会人になって落ち着いたとはいえ、いまだに信じられない。
『洋平君は高校生なんだよね?』
1人浮いていた俺に話しかけてくれたのは、義理の姉になるであろう里英さんだった。
『え、まぁ…はい』
『圭介がいつも洋平君の事話すの。
酔ってる時は特に』
『里英、余計な事言うな』
なんとなく里英さんは千花と被る。圭にいも俺と同じで派手な女とばかり付き合ってたから。
結婚相手にこういうタイプを選ぶんだって、
ちょっと意外だった。
『つーか、弘之にも連絡したんだけど今日は仕事だって。あいついっつも仕事ばっかりしてんだよ。絶対彼女居ないぜ』
圭にいは麦茶を飲みながら、愚痴をこぼしていた。
弘之(ひろゆき)は2番目の兄貴で、俺は弘にいと呼んでいる。
弘にいは俺達と違って勉強も出来て、大学にも行った。でもキレると超怖くていつも圭にいと殴り合いの喧嘩をしてたっけ。
その痕跡は家のあちらこちらにあって、弘にいが空けた壁の穴が今でも残っている。
『余り物しかないけど、今何か作るから食べていきなさい』
『あ……私も手伝います』
母さんと里英さんが台所に立っている間に、圭にいにこっそり聞いてみた。
『つーか、まじで結婚すんの?』
子どもが出来てる訳じゃないみたいだし、圭にいは結婚不適合者かと思ってたのに。
『おう。だってよ、俺もう29だぜ?来年は三十路だし。そろそろ覚悟決めてもいいかなって思ってよ』
確かに、俺と圭にいは12歳離れてるから計算すると29か。って事は弘にいは25?
時間の流れてって怖ぇ…………。