君はガラスの靴を置いていく
『ちょっと醤油足りないから暇なら買ってきてくれない?』
母さんの一言で俺達は買い出しに行かされた。
と言っても近くのコンビニだけど。
『なんか懐かしいな、この道』
圭にいとこうして歩くのは何年ぶりだろう。
いつもチビで馬鹿にされていた俺も、いつの間にか圭にいと同じ背丈になった。
『お前まだ17だもんなー。俺もあの頃に戻りてぇよ』
『いや、圭にいが一番やばい時じゃん』
圭にいが17の時、俺はまだ5歳だったけど家の空気が荒(すさ)んでいた事は覚えてる。
なんかパトカーがうちに来た事もあったし、兄貴達の反抗期は半端じゃなかったらしいから、それに比べれば俺っていい子じゃね?
『つーかお前には兄貴を敬う気持ちが足りねぇー。せっかく久しぶりに帰ってきたのに何かないの?』
『うーん……………老けた?』
『殺すぞ』
確かに兄貴達は大人になった。
兄貴達のせいで川で溺れて死にかけた事とか、無理矢理バリカンで坊主にさせられた事とか今でも許せない事は多いけど、
それでも兄貴達が居た家は賑やかだったなぁって思う。
『………たまにはこうして家に帰ってきなよ。母さん今でも兄貴達の部屋掃除してるし。けっこう寂しいんじゃね?』
『あー、今はお前しか居ないもんな。まぁ、俺は長男だからいずれあの家に帰るけど、』
『………』
『それまではおふくろの事よろしくな』
ポンッと俺の頭を撫でる圭にいの手はやっぱりでかかった。
俺もいつか結婚とか覚悟を決める時が来るのかな?きっと時間や歳と共に気持ちも変わっていくんだろうけど………
まだ高校生の俺には理解出来ない世界だ。
『あのさ、圭にい……』
『ん?』