君はガラスの靴を置いていく



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『すいません、お昼御飯まで頂いちゃって』

『いいのよ、またいつでもいらっしゃい』


帰り際、玄関でふたりを見送った。母さんと里英さんは案外早く打ち解けたみたいで、ちゃっかり連絡先も交換していた。


『あんたは後でお父さんに電話しなさいよ』

圭にいに向けての小言も忘れずに。


『分かってるよ』

圭にいは車に乗り込み、少しだけ窓を開けた。


『じゃぁな、洋平』

『洋平君、今度うちにご飯でも食べにきてね』


里英さんもニコリと笑い、車はそのまま発進して行った。


2人が居なくなった後、母さんがポツリと呟く。


『あの子が結婚ねー、だから私も歳を取る訳よね』

『……』


きっと母さんも突然の事で驚いたと思うけど、内心は喜んでると思う。里英さんもいい人そうだったし


『あんたも遊ぶのは構わないけど、たまには彼女くらい紹介しなさい。お母さんが居ない時に連れ込んでるの知ってるんだから』


あ、やっぱりバレてた?

紹介しないのは恥ずかしいからじゃなくて、その必要がないと思ってたから。だってどうせすぐに別れる。


『……まぁ、いつかは』

俺は小さな声で答えた。



俺だって兄貴みたいに変わるかもしれないし、
変わらないかもしれない。それは現時点では分からない。でも…………


“あのさ、圭にい……………
なんであの人選んだの?”


“てめぇ俺の女にケチつける気か?”


“いや、そういう訳じゃないけど”


“うーん、合わなかったから”


“は?”


“お前にもいつか分かるよ”


圭にいの言葉の意味も、
いつか俺に分かるだろうか-------------------。



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