君はガラスの靴を置いていく
床に落ちた銀のトレーに散らばった包帯やハサミ。確か以前にも同じような事があった。
これがデジャブってやつか?
“千花”は俺を見るなりサッと目を反らした。何故か拾いづらそうに左手を使っている。
『……右手、怪我したの?』
返答はない。そりゃそうだ。
俺だってこのままスルーするつもりだったけど、
気付いたらこうなっていた。
千花と二人になるのはあの視聴覚室以来。
“私達って初めから同じ気持ちじゃなかったんだね。もしかしたら何も始まってなかったのかも”
あの涙をたくさん浮かべた千花を思い出して、
やっぱり顔を出すべきじゃなかったと後悔した。
『………バレーでちょっと突き指したの』
少し間を開けて返事が返ってきた。正直ちょっとびっくりしてる。
『俺なんかと話してくれるんだ』
『え?』
普通なら睨まれても仕方ないのに。
昔から別れた相手でもすぐ友達に戻れたり、何もなかったように接するから無神経だってビンタされた事もあった。
特に千花は俺のせいで傷ついただろうから、他人のように関わりを持たない事が正解なんだと思う