君はガラスの靴を置いていく
『貸して、やってあげるよ』
俺は止まっていた千花の包帯を巻き直した。くるくると人差し指に巻きながらある事に気づく。
『あれ、友達ではないからこういう事もしたらダメなのかな?』
自然に手も触っちゃってるし周りから見たら誤解されるかもだし。
『うーん、普通はダメかな。宮澤君女の子との距離が近いからすぐ好きになられちゃうんだよ』
俺って距離近いの?あんまり自分からは寄っていってない気がするけど腕掴まれたり抱きつかれても放置だしな……
俺は手早く包帯を巻いて2歩後ろに下がった。
『ふふ、ありがとう』
千花と和解できた訳じゃないけどお互いにシコリは取れた気がする。ボールを当ててくれた増田に少し感謝だな。
『あのさ……多分これ聞いたら怒られるし最低な奴って思われるけどひとだけ聞いてもいい?』
『……?』
『俺のどこが好きだったの?』
千花はすごくいい子だし欠点もない。そんな純粋さに漬け込んで俺は押しまくったけど、
“私は本当に宮澤君の事が好きだった”
なんて、涙を浮かべて言われるほど俺は別に特別な事はしてない。そこに感情があったかと聞かれたら分からない。
『理由なんてないよ』
千花がポツリと呟いた。
『宮澤君と居るとドキドキしたの。
他の人じゃならないのに
宮澤君にだけドキドキした。
これだけじゃ好きって理由にはならないのかな』
少し恥ずかしそうに千花は言った。
ドクン、ドクンと心臓が鳴る。
分からないけど身体中が脈を打ってなんだか苦しい。
これがドキドキするという事なのかどうなのか、
よく分からないまま時間は過ぎて
その4日後--------------------
千花と豊津先輩が付き合いはじめた。