君はガラスの靴を置いていく




『いとりんと先輩、付き合いはじめたんだってね』


退屈な授業が終わり教室に戻る途中、明日香が言った。

明日香は千花と同じクラスだから嫌ってほどあの二人を見てると思うけど、あえてこの話題には触れてこなかった。


『んー、らしいね』


二人の噂は俺の時より広まるのが早かった。

豊津先輩は生徒会の奴らに堂々と交際宣言したらしいし、登校も下校も一緒にしている。

先輩はモテるし、千花は俺との事があったから色々言われそうだけどそれでもあの二人はお似合いだって声の方が多い。


俺との事で慎重になってただろうし、付き合う事になった経緯は二人にしか分からない。


『私は女だからいとりんの気持ち分かるなぁ』

『は?』


『恋の傷は恋で癒すしかないんだよ』


分かってないのは明日香の方だ。

千花はそんな理由でつき合ったりしねーよ。
人一倍悩む性格だからその末に出した答えなんだろう。


豊津先輩なら千花が泣く事はない。

分かってるのはこれだけだ。


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