君はガラスの靴を置いていく



『だって糸井さんなんて高嶺の花じゃん!それなのに汚れきった宮澤が……』


『分かる!ってか基本みやがする事なんてみんな
「え、」って思ってるよ!なに考えてるか分かんないし割りと敵多いしさ』


何故か増田と明日香が意気投合したように盛り上がる。

こいつらこの場に俺が居る事分かって言ってんのかな。普通に悪口なんですけど。


『半分は好かれて半分は恨まれてる感じ?俺が女だったら宮澤に近付かない。いや、でも誘われたらどうだろうな…』


『増田っちが女だったらみやが無理でしょ。見た目はギャルだけど超嫉妬深そう』


『は?俺は清楚な綺麗系目指すけど?』


『綺麗系とかまじウケる~!』


こんなやりとりを俺は呆れた顔で見つつ、残りのパンを全部完食した。こんなのにいちいちリアクションしてたらこいつらと友達なんてやってられない。

まるも無言でおにぎり食べてるし、この1歩引く感覚は絶妙だと思う。


『……ふふ』


増田と明日香のやりとりがまだ続く中、微かな笑い声が聞こえてきた。

それはクスクスと笑う千花の声だった。


千花の笑い声を聞くのは久しぶりでこの場にいたみんなが一瞬で千花の方に視線を向けた。



『あ、ご…ごめんなさい。なんかすごい面白くて…』


笑う事はあっても笑わせる事は出来ないから俺にとっては新鮮だった。


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