君はガラスの靴を置いていく
悠里はまだ何か言いたそうだったけど増田に呼ばれて行ってしまった。ぎゃーぎゃーと騒がしい廊下で悠里に言われた事を巻き戻していた。
兎と亀って自信過剰の兎が亀を見下して、居眠りしながら待ってたら亀に追い抜かれたって話だっけ。
確かに俺は何もせず千花を想うだけの先輩を見下してた。
俺が千花を知るずっと前から好きだったくせに
気持ちも伝えず、一定の距離のまま変わらない。
そんな奥手の奴に負ける気なんてしなかったし、
危機感も生まれなかった。
でも何もしなかったんじゃなくて、そのタイミングをゆっくり待っていたのかもしれない。
きっと何もしなかったのは俺の方なんだ。
『ねぇ~男子達、体育倉庫に使える釘が何本残ってるか見てきてよ』
その日の放課後から文化祭の準備が始まった。
プラネタリウムでやる事なくてラッキー!とか思ってたのに教室の外や窓に貼る宣伝ポスターや看板は派手にしたいって女子が張り切ってるからなかなか帰れずにいた。
『つーか教室に飾り付けしようとしてる奴いるけどなんなの?どうせ暗くするから見えなくね?』
『さぁ』
俺はまると教室の隅にいた。ほぼ男子はやる事ないしやろうとすると文句言われるし。かと言って帰ればキレられる本当女子って面倒くさい。