君はガラスの靴を置いていく
『ってか増田さー、さっきからずっと携帯いじってるけど暇なら体育倉庫行って来てってば!』
女子の不満は自分の席に座ったまま微動だにしない増田にぶつけられた。
『は?俺すげー忙しいけど!むしろ文化祭の宣伝活動してんだから邪魔しないで』
増田は悠里から数人の連絡先を教えてもらったらしい。文化祭の宣伝活動っていうか……ただ一緒に回れる子を見つけてるだけだと思うけど。
『じゃぁ、他の男子は……あ、丸山君達暇そうじゃん!ちょっと本数だけ見てきて』
丸山君達とは……まさか俺もですか?
まると顔を見渡してお互い深いため息をついた。
『つーか釘の本数とかなに?』
『あー看板取り付けるのに使うらしい。明日足りない物は買い出し行くみたいだから予算少しでも減らしたいんじゃない?』
廊下に出ると普段は付かない教室の電気があちらこちらで付いていた。どうやら他のクラスも残って作業してるようだ。
2組を通り過ぎるついでにチラッと見てみたけど千花の姿はなかった。明日香や他の女子達は残ってるのに。
………もしかして豊津先輩と一緒とか?
3―1は何の出し物やるんだろう。そんな事を考えながら倉庫に向かう途中、図書室の明かりが目に入った。
本の貸し出し時間は過ぎてるし、あそこをこんな時間まで利用するのは読書好きか勉強好きのどっちか。
そう言えば前に千花も勉強してた時があったっけ?
『悪い、まる先に行ってて』
こういう直感はわりと当たるんだ。