君はガラスの靴を置いていく
-----------------俺が明日香と?なんで?
いつならそんな風になってんの。
『いや、ないから。明日香はただの友達だし』
一番困るのが知らない所で彼女が居る設定にされてる事。それだけでチャンスが減るじゃん。
『………そ、そうなの?いつも仲いいし今朝も一緒に登校してたからてっきり……』
千花の黒髪が風に揺れる。
俺はその言葉を聞いて距離を一気に詰めた。
『それって、いつも俺の事見てるって事?』
『……違っ……宮澤君学校で目立つからそれで……』
---------------うん、分かってるけど。
そんな反応されたらまたからかいたくなる。
でも止めとく。警戒されたら嫌だし。
『千花って誕生日いつ?』
話をガラリと変えて、普通の会話をした。
『7月26日だよ』
『まじ?俺も7月生まれ。3日で17歳になったばかり』
『そうなの?おめでとう』
千花はニコッとはじめて俺に笑いかけた。
やっぱり良く見ると男子から人気があるのが分かる。最初は強張(こわば)ってたけどこうして話してると可愛いし。
-----------あれ、そう言えば7月26日って…………
『千花の誕生日、夏祭りの日じゃん』
毎年、地元の友達と行くかその時付き合ってる彼女と行ってる。
『うん、そうだよ。いつも夏休み中だから忘れられちゃう事が多いんだけどね』
ふーん、へぇー。
夏祭りの日ね…………。
俺は不適切に微笑み、四つ葉のクローバーを一つ取った。
『一緒に行く?』
そう言ってクローバーを差し出した。
『え、…………え?』
千花はまたあたふたしてる。
『はは、冗談。そろそろ帰ろうか。暗くなると危ないし』
本当は冗談じゃないけど。まぁ、今日はこれぐらいだろ。夏祭りまで2週間あるしね。