君はガラスの靴を置いていく
『ん……』
少し動いた千花に慌てて手を引っ込めたけど、
その後またスースーと寝息が聞こえてきた。
何故かドキドキとする俺の心臓。
バレてはいけないって事ともうひとつ。千花に触れたのは随分と久しぶりだったから。
悠里の言う通り俺は自分で自分の首を絞めているのかもしれない。友達は触れちゃいけないしドキドキもしちゃいけない。
その線を越えないから友達というカテゴリーの中に居られて、話す事も目を合わす事も出来る。
1番近いけれどその線を越えたいと望むならきっと1番遠い場所なんだろう。
叶わない恋愛なんてした事がない。
むしろ片想いなんてダサいって思ってた。
多分それを終わらせる方法はたったひとつ。相手に気持ちを伝えて両想いになるかフラれるかどっちかだけ。
俺に足りないのは勇気じゃなくて、
フラれた後、この気持ちを断ち切って千花を忘れる事ができるのかって話。
………無理だろうな……
少なくとも同じ学校にいる限りは。
なんでこんなに想いが溢れてくるのか俺にも分からない。
気持ちを自覚した途端、日に日に千花を目で追ってしまう。
『本当、馬鹿だよな俺……』
千花の柔らかい前髪を撫でて、再び頬に触ろうとした瞬間、ガタッと背後で物音がした。
振り返るとそこには豊津先輩が立っていた。