君はガラスの靴を置いていく
└夢と現実
プラネタリウムが終わり廊下に出ると女子達がものすごい勢いで体育館に向かっていた。
『ステージそろそろじゃない?』
『やばいっ、最前列もう埋まってるかな……』
午前中は後輩のダンスとかソーラン節とかそんなステージをやってたっぽいけど、女子達が急いで行くって事はそろそろバンドが始まるって事か。
『……千花は行かなくていいの?』
なんだか一気に現実に引き戻された感じだ。
『行くよ。明日香ちゃんも見たがってたしちょっと連絡してみようかな』
千花が携帯を取り出すとそこには見知らぬストラップが付いていた。
豊津先輩とおそろいなのかな……
千花の口から直接、先輩の事は聞いた事ないけど喧嘩とかしなそうだし多分上手くいってるんだろうな。
デートとかしてんのかな?
お互いの家を行き来したり?
あー、なんかやばい。またモヤモヤしてきた。
『今メール打ったら明日香ちゃんも体育館に向かうって。じゃぁ……私行くね』
『あ、待って』
立ち去ろうとする千花を思わず呼び止めてしまった。手を掴まなかったのは幸いの救いだ。危ない危ない。
『えっと……あ、そういえばこの前豊津先輩から
千花から何か聞いてる?って言われたけど………
なに?』
少しでも時間を伸ばしたい。
『え…な、なにかな。ちょっと分からない』
少し動揺してるように見えたけど引き伸ばすはずの話が1秒で終わってしまった事の方がショックだ。
『じゃぁ……行くね』
再び歩き出す千花を呼び止める事は出来なかった。