君はガラスの靴を置いていく
やっぱりカッコいいとか思うのかな?
体育館は暗いから千花の表情までは見えないけど。
演奏が終わるとまた女子達が騒ぎはじめてバラードを聞いて余計に火が付いたみたいだ。
『カッコいい~』『やばーい!』
あちらこちらでそんな声が飛んでいる。
ってか先輩のバンド見るつもりじゃなかったのに見ちゃったし。そもそも増田が前に行ったまま帰ってこないんだけど。
どうせ身動き取れないか、演奏終わったまどか先輩を追いかけてるかどっちかだ。
『あれ、みやどこ行くの?』
2曲目もあるっぽいし、もういいや。
『後はまると見て』
息苦しい体育館を抜け出そうとした時、他校の生徒がステージに質問を投げ掛けた。
『あのー、ギターの人は彼女居るんですかぁ?』
すると代弁するようにマイクを持ったボーカルが『彼女居るよ~!な?聖夜』と場を盛り上げる。
『えー居るの?』
『連絡先知りたかったのに~』
本気かノリかは知らないけど女子達がガッカリした声を漏らした。
『聖夜はね、彼女とラブラブだからだめー。ずっと片想いしててようやく実ったんだもんな?』
『バカ、やめろって』
なんで大音量のマイクでのろけ話聞かなきゃいけねーんだよ。やっぱりさっさと帰れば良かった。
千花も笑顔で聞いてると思いきや、丁度非常出口から外に出るところで思わずその後を追いかけた。